Chiakiさん (6) 現場で実感する日米の働き方の違い
2025年10月15日掲載
Chiakiさんの前回の体験談はこちら。
役割分担が明確で自由度が高いアメリカの現場
私は看護大学を卒業後、OPT(Optional Practical Training)を利用してアメリカのナーシングホームで働いています。実際に現場に立ってみると、日本での経験と比べて「働き方の違い」を強く感じることが多く、日々学びの連続です。
まず印象的なのは、役割の分担が非常に明確であることです。RN、LVN、CNA、RNAなど、それぞれが自分の専門性に基づいて業務を進め、互いの領域を尊重し合っています。RNは現場のスーパーバイザーとして、患者さんや家族、チームメンバーの指導や調整を行います。具体的には、日々のルーティンとして、医師からの指示の確認と遂行、患者さんとその家族への報告、患者さんのバイタルサインの確認、感染管理、褥瘡や創傷のケア、服薬管理など、その他スタッフのサポートなどを行います。例えばある高齢の患者さんは、自分で起き上がることが難しく、食事のときには介助が必要です。その際、私はCNAと連携して食事を提供しながら、患者さんと会話を交わして気持ちの安定を図ります。ちょっとした会話から体調の変化に気づくこともあり、観察力や判断力が求められる場面も多いです。患者さん一人ひとりの状態や希望に応じて対応するので、毎日同じ業務でも学ぶことが絶えません。
働き方の自由さも大きな特徴です。私の働く施設では、勤務時間はシフト制ですが、基本的には一人一人が毎日決まった時間、曜日に働く勤務体制を採用しています。しかしながら、シフトは柔軟で、体調や家庭の都合に応じて変更することも可能です。シックリーブやバケーションの申請も簡単で、しっかり休むことが前提として認められています。ある日、風邪気味で体調がすぐれなかった私は、朝に短いメッセージを送るだけで休みが認められました。その日のチームは「無理せず休んで」と声をかけてくれ、安心して休養できました。このように、「責任を持ってやるべきことを遂行するなら、働き方は柔軟でよい」という文化が現場には根付いています。
一方で、看護師にはリーダーシップが強く求められます。私は看護大学で、リーダーとしての資質を学ぶ授業を受けました。特に印象に残っているのは、「チームマネジメント演習」という授業です。臨床シナリオをもとに、チームを統率して指示を出すロールプレイを行いました。患者さんの安全を最優先にしつつ、チームメンバーの意見を尊重して判断を下すことの難しさを体験しました。この経験は、OPTでの現場でも非常に役立っています。初めはリーダーとしての役割に戸惑いましたが、CNAやLVNと協力して業務を調整しながら少しずつ経験を積み、自信を持って対応できるようになってきました。
仲間のサポートを得て
さらに、私自身が特に恵まれていると感じるのは、周囲のサポート体制です。私は現在、スポンサーシップを通じて永住権を申請中で、日本人は私ひとりですが、同僚たちは私の状況や悩みを察して助けてくれます。「自分の健康を最優先に」「困ったことがあれば遠慮なく頼んで」と声をかけてくれる仲間がいることは、大きな心の支えです。先日も、ある患者さんの褥瘡ケアで手間取っていた私に、周囲が自然に声をかけて手伝ってくれました。役割に関係なく助け合う文化が、現場には自然に根付いています。
こうした環境の中で、日本でリーダーとしての経験がなかった私でも、アメリカで看護師として責任を持つ楽しさを感じながら働くことができています。言語や経験不足で戸惑うこともありますが、仲間の支えがあるからこそ前向きに挑戦できています。
OPT期間中の経験を通じて、私は「働き方」という面でアメリカが自分に合っていると実感しています。役割が明確で自律性を尊重する環境は、看護師としての成長の幅を広げてくれます。そして何より、支え合う仲間の存在が困難を乗り越える力になります。アメリカで看護師として働くことに興味を持っている方には、ぜひ一歩踏み出し
てほしいと思います。きっと新しい自分の働き方や生き方、そして生涯大切にしたい仲間を見つけられるはずです。



