日本の医療従事者対象Zoomセミナー 「アメリカ医療現場から~ロサンゼルスにおける訪問看護の実例~」を開催して

日本の医療従事者対象Zoomセミナー 「アメリカ医療現場から~ロサンゼルスにおける訪問看護の実例~」を開催して

2021年11月15日掲載

9月18日に、日本の医療従者を対象にしたZoomセミナー「アメリカ医療現場から~ロサンゼルスにおける訪問看護の実例」を行いました。今回のコラムでは、このセミナーについて共有したいと思います。

前職の縁がセミナー開催のきっかけに

アメリカ看護留学を専門にしている私の下に、訪問看護のセミナーの依頼をいただいたのは、前職の縁がきっかけでした。私は、高校と大学、卒業後の教員チームで栃木県代表選手としてバスケットボールをしてきました。今回ご依頼いただいた「株式会社悠愛:まるごとケアの家あいさん家」の横山孝子さんは、当時練習相手だった男子チーム選手の奥さまだったのです。孝子さんとはご縁があり、5年ほどには、孝子さんの娘さんの語学留学サポートで再会し、その後も親交がありました。

このコラムでも何度か取り上げているのですが、今年の2月中旬に、日本にいる私の母が難病と診断されたため、私は3月と6月に介護のため一時帰国しています。その帰国中にも、孝子さんご家族は、私の息子が参加していたバスケ練習会場までわざわざ足を運んでくれました。ほんの数カ月の間ですが、家族の介護という経験をし、改めて訪問看護師やケアマネジャー、訪問医師のサポートがあることに感謝しています。遠距離にもかかわらず、毎日のように、母の病状はもちろんのこと、一緒に暮らしている父の様子までメールでお知らせいただき、本当にありがたい気持ちでいっぱいです。

このアメリカ看護留学ビジネスを立ち上げたきっかけもそうでしたが、一時帰国中も「私に何かできることないだろうか」と、母の訪問看護を依頼している看護師さんたちに会うたびに、ずっと考えていました。そういった経緯もあり、私がアメリカから遠距離からでも安心してお願いできる訪問看護や在宅医療従事者に対して、何か報いることはできないかと思っていた矢先に、孝子さんのSNSを見つけたのです。

それは以下のような切実なメッセージでした。

コロナ陽性者の訪問看護の受け入れについて迷っています。私個人としては、在宅の看護師として受け入れる以外の答えはないと思っていますが、いろんな情報が錯綜する中、何が正しい対応なのか分からなくなってしまいました。そこで、コロナ陽性者の対応をしている訪問看護事業所の方や在宅医の先生に質問です。

1) コロナ陽性者への訪問のスタッフは専従ですか?

2) 専従でないとしたら、どのようなやり方をしていますか?

私のステーションは、小規模なので専従と言われたら「対応はできない」と返答するしかありません。私の周りのステーションの管理者も悩んでいます。私個人としては、基本の感染対策(スタンダードプリコーション)を守り、必要な支援の時(自宅の中に入る)は、PPEを行って対応すれば、専従にしなくても良いのかとも思います。ただ、事業所内でもさまざまな思いがあり踏み出せない状況です。どうかお知恵をお貸しください。

このメッセージをきっかけに、今回のZoomセミナーが実現したのです。「Zoomセミナー」の参加者は24名。そしてその後、弊社へ問い合わせ頂いた「ビデオセミナー」の参加者を入れると合計39名にも及びました。

セミナーの内容(一部)
◉ロサンゼルスのコロナ禍における訪問看護師、在宅医療従事者、施設、ファシリティーについて
◉ロサンゼルスにおける訪問看護の実例

以下は、セミナー参加者の声です。

全国訪問ボランティアナースの会キャンナス・有限会社ナースケア グループ 代表
菅原 由美さん
Web: nurse.jp

America Kango 星さん。本日はご講演ありがとうございました。バスケットボールの選手であった星さんが、アメリカに来る看護師さん達のご支援をしてくださっていることをとてもうれしく思います。そして今日のように医療職に対して第三者の目線で見える医療者の姿をお話しくださることはとても有意義でした。

日本人は自己PRをするのがとても苦手です。自己PRをすれば自己満足と陰口を叩かれたり目立ちたがり屋と言われたり…でも自分の職業に自信を持って働いているなら、それをきちっと自己PRとして発信していかないと、市民の方々には医療職の大変さが伝わらないのだと言う気づきを与えてくださいました。

アメリカの看護師さんやお医者さんたちのように、現場は大変なんだと言うことをYouTubeや何かでもっともっと自己発信していく必要がありますね。それが市民の方の命を守ることにつながると言うことに気付かされました。

医療法人社団慈恵会 北須磨訪問看護・リハビリセンター 訪問看護師・慢性疾患看護専門看護師  藤田愛さん
Web: www.wyl.co.jp/media/nursing/covid19 (藤田愛さんの記事)

星さんのプレゼンテーションは楽しく具体的で、日本とロサンゼルスの訪問看護の共通点と違いが分かりました。私がコロナの訪問看護を始めた時の決心は、「コロナでもコロナでなくても訪問看護を必要とする人の命と生活を守る」という信念でした。ロサンゼルスでコロナの訪問看護をする看護師たちも同じ思いということを知り励まされました。違いはコロナに感染する前提で訪問をしていない日本と、する前提で訪問しているロサンゼルス。その背景にある医療従事者、ケア提供者の発信力・ネゴシエーション力、故の国民や政府からのリスペクト。コロナを好機に訪問看護師の知名度と活躍、努力を知ってもらえるようになろうと思います。貴重なお話を聞かせていただいてありがとうございました。

株式会社悠愛 まるごとケアの家あいさん家
横山孝子さん 

Web: www.ai-houkan.com

とても貴重な時間でした。参加してくださった方も素晴らしい方々で、情報交換を聞いているだけでドキドキするくらい勉強になりました。星さん、参加してくださった皆さん、初のホストで至らないことばかりですみません。本当にありがとうございましたm(_ _)m

菅原代表(全国訪問ボランティアナースの会キャンナス・有限会社ナースケア グループ 代表)が拡散してくれたことで、藤田さん(医療法人社団慈恵会 北須磨訪問看護・リハビリセンター 訪問看護師・慢性疾患看護専門看護師)の活動を知ることができた訪問看護師も数知れずいます。星さんも菅原代表も現場を十分理解しているからこそ、その役割は大きいと思っています。2人とも素晴らしいです。今回のZoomミーティングは、本当に素晴らしい機会だったと改めて思いました。二ノ坂先生と星さんのやり取りも心が熱くなりました。ミーティングの録画から、情報交換のやり取りだけでも、皆さんに報告したいと思っています。

キャンナス吹田 
河本郁子さん
Web: www.facebook.com/ikuko.kawamoto.7

今日はありがとうございました。感想です。星先生、横山さん、今日はありがとうございました。驚く内容と、医療従事者でない方からのお話はとても分かりやすかったです。病院勤務のキャンナス吹田メンバーや、知り合いの病院勤務者は皆病院の内状を外に漏らさないようにと厳戒態勢を取っています。だから個別に探らなければ現状は分かりません。去年、物資不足の時ですら恐怖と我慢の中で仕事をしていました。今でも国際交流してるメンバーは同僚から「コロナ持ち込まんといてな」と言われたり、自宅待機者の分の仕事が回ってきたりと大変です。

アメリカの訪問看護師が紹介し合うというのにも驚きでした。ケアマネで仕事してる中で、訪問看護の依頼した時に空きがなかったら「無理です」のひと言だけで「うちは無理やけど〇〇は空きあるで(とか紹介しよか)」と言う言葉は聞いたことありません。自分とこのことだけでなく、周りの情報を知ってるからこそできることですよね。

74歳のナースや訪問しながら病院もなんて良いなあと思ったり、コロナにかかる前提でも、チームでされてる方に罹患者いないと言うのを聞くと、そこそこ対策とっていれば感染することも少ないのかなと思いました。星先生のような方がいると海外ナースも心強いだろうなあと思いました。ありがとうございました。

看護学校在宅看護の教員
尾高 貴美子さん

私は今、看護学校で在宅看護の教員をしていますが、緊急事態宣言の影響で学生は特に訪問看護の実習ができない状況で、学内でのペーパーページェントで学習している状況です。アメリカの看護学生がボランティアで活動しているとの報告を伺い日本との実情の違いを感じました。まだまだ先が長そうにも思えるコロナ状況下ですが、学生の学びに極力影響が出ないよう、現場の情報を学生に伝えていきたいと思っています。

医療法人 にのさかクリニック
二ノ坂 保喜院長
Web: www.drnino.jp/index.php#message

私は福岡県で開業しております。今回は、ロサンゼルス在住の星さんのお話とあって、よりリアルだと感じました。本来なら、かかりつけの医師や病院が、保健所と密に連絡を取り合いながらコロナの治療を進められたらよいのですが、実際は、保健所に報告した後、その管轄の保健師と患者とでやり取りが進められています。いずれは、医師、患者、その家族、保健所が連携を取れればよいと思っています。今回のセミナーを通して、星さんが普段からSNSなどで積極的に発信している様子を見て、私たちも医療従事者として発信していくということが必要であると感じました。将来的には、世界に発信できればよいですね。私も、過去にバングラデッシュやインドに行ったことがあり、この経験も日本の在宅医療に反映させることができるのでは思っています。今後は、常に「自分たちに何ができるのか?」と思いながら対応していこうと思います。今日は本当にありがとうございました。大変勉強になりました。

(その他参加者一覧)
青木さん:訪問看護師(埼玉県)
新山さん:訪問看護師(滋賀県)
鳥居香織さん:訪問看護師(栃木県)
宮下さん:訪問看護師)(愛知県)
渡辺医師:メンタルホスピタルかまくら山(神奈川県)
小高さん:看護学校教員
川村さん:バングラディシュつなぐ会
小玉さん:看護師 キャンナス相模原

セミナーを終えて

セミナー後に、上記のようなたくさんのメッセージをいただきました。ありがとうございます。参加されていた皆さんは医療従事者であり、さまざまなボランティア活動を通して信念を持って行動している方々であることに共感しております。

国によって大きく異なる新型コロナウイルス対策や方針。また、参加者からもメッセージがありましたが、日本人特有の「出る釘は打たれる」と言う環境だけに、なかなか日本社会から理解して貰えるのには、さぞかし辛いお気持ちになるのであろうと察しています。

私は、アメリカで看護師になりたい!!という方々のトータルサポートをしています。その内90%以上が、現状をどうにかいい方向に持っていきたくても、自分一人の力ではどうにもならない。結局のところ、責任感の強い真面目な看護師たちが疲労感を感じていく日々で「何も変わらない」と諦めるしかない、と言っています。また、留学をしたい理由には、日本の医療に疲れたから、人間関係が難しいから、勤務時間が長く拘束されているのがつらいから、看護師の地位が確立されていなく感謝されることがないからなどがあります。

コロナ禍では、アメリカで働いている看護師たちをはじめ、コロナ患者に対応してきた(している)医療従事者たちのメンタルケアも欠かせません。私はカウンセラーではありませんので、ひたすら話を聞くことぐらいしかできませんが、話を聞いていると、患者さんに笑顔で接する立場にいる医療従事者や看護師側がハッピーでないと、良い方向へ向かうどころか共倒れになってしまうと感じます。

特に、高齢者を対応する医療現場では、気持ちも身体も弱っている患者が多いと感じています。それを支える看護師たちが笑顔でいるということはとても大事だと思っているからです。私一人でも、そんな医療従事者や看護師たちに対し、常に笑顔で、そして誠心誠意で応対することが必要だと思っています。患者さんもそうですが、「自分を受け入れてくれる」と思える環境こそが、ポジティブに考えられる大きな支えになると思うからです。とにかく今は、何よりもケアをする医療従事者や看護師側がハッピーであることが必要であると思います。

世界各国の医療従事者たちは、疲れがピークになっていると感じます。医療従事者という職は誰にでも容易くできる職業ではありません。日々、命を賭けてて貢献してくださっています。図り知れない不安と葛藤を持ちながら、第一線にたち今を生きている職業だと思います。本当に素晴らしいと思います。今回のセミナーが、少しでもお役に立てれば光栄です。

最後に、各国の医療従事者に心から感謝しています。ロサンゼルスへお越しに際は、ぜひお声掛けください!

NCLEX受験合格体験記(2021年10月の合格者)

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2021年アメリカ看護留学「Zoom」による少人数制セミナー開催レポート

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