医療従事者のなかでも人気がある看護師
多種多様の人種が住むアメリカ。この国で働く看護師は、仕事において言語や文化での多様性が求められることから、国際的な職種だと言われています。
日本では、看護師の資格と言えば、准看護師と正看護師の2種類しかありません。熟練の看護師には、認定看護師という制度がありますが、到底アメリカにはおよびません。アメリカの看護師の資格は多岐にわたり、それぞれに高い評価が与えられ、また社会的地位や年収は、その職責によって大きく違うのです。
看護師は、医療従事者の中でも非常に人気が高く、例えばアメリカの看護大学に入学するためには、早くて2年~3年、現在では5年間の入学待ち(Waiting List) ができるほどです。 看護師の資格にはいくつかありますが、以下に簡単にご説明しましょう。
アメリカ看護師の資格
Nursing Assistant -NA(看護助手)
医療業務におけるさまざま々な雑用を一手に引き受けます。具体的には、入院患者のための病室準備(ベッド/浴室/トイレ)、注射準備、そして食事の説明などです。年収は2.5万(約250万円)ほどです。
Practical Nurse-LVN(准看護師)
正看護師の指示の下、最低限の医療対応をします。年収は、初年度でも年収3.2万ドル(約320万円)くらいです。
Registered Nurse-RN(正看護師)
主にクリニック勤務です。年収は3.8万ドル(約380万円)ほど。ちなみに3万ドルは、アメリカの一般的な四年制大学の新卒の平均年収です。准看護師と正看護師の職責は、明らかに違います。
Hospital Nurse(病院勤務)
文字通り病院勤務の看護師です。日帰り患者と入院患者の対応、入院退院時の説明、准看護師への指示、カルテ管理、薬管理、医師との連絡、救急体制時の担当など、勤務する科によって年収は変わります。4.5万~7.5万ドル(約450万円~750万円)です。
Bachelors of Science in Nursing-BSN (看護学士)
四年制大学の看護学科を卒業して学位を取得します。年収は6.5万~9.5万ドル(約650万円~950万円)。
Master of Science in Nursing-MSN(看護学修士)
3 年間の大学院で修士号を取得。ナース・プラクティショナー(Nurse Practitioner-NP)として、医師の代理が可能で、検診・問診もできます。またクリニック開業も可能です。年収10万ドル(約1000万円)以上は確実と言われています。
Doctor of Philosophy in Nursing -PhD in Nursing(看護博士)
博士号を取得すると、大学教授を目指す人が多いです。年収13万ドル(約1300万円)。
※1ドル=100円計算
職種の明確な棲み分け
ちなみにナース・プラクティショナーは、医師同様の白衣を着ているので、病院内では医師と見分けがつきません。しかしアメリカの病院では、看護師が対応する際、「ナース・プラクティショナーの○○です」「看護師の○○です」と自己紹介するのは必須です。その理由は、それぞれの職責に応じて、求められる経験と学歴が異なり、患者への担当職務も違うからです。
看護師の勤務時間は、12時間勤務を3日間行い、4日間休みというパターンが多いです。また、求人詳細を見ると、雇用者が募集している場合は、条件(経験年数、経験内容、各ライセンス等)、そして雇用体制(昼間と夜間の勤務のどちらか)を考慮して、最終的な勤務形態を決定していきます。つまり日本のように、昼間と夜間の勤務を交互に入れるような勤務体制ではありません。また、On Call Nurse(オンコール・ナース)という雇用登録制で緊急時にいつでも対応可能という看護師もたくさんおります。
看護師の報酬は、時給制が主で、時給の高い夜勤を選ぶ人も多くいます。アメリカの看護師は、各州ごとに書類審査の基準や、さまざまな看護師試験の規定条件を満たさなければ資格を取得することができません。ですから、たとえ看護師資格を取得しても、他州で看護師をしようとする場合、まずはその州の看護協会が認める資格に変更する手続きをする必要があるため、看護師ライセンス変更も簡単ではないのが現状です。そして報酬は州ごとによってもかなり異なります。
国際看護師と呼ばれるゆえん
近年は、日本人の看護師も、世界の舞台にキャリアアップを目指す人が多く、海外への看護留学が盛んです。やはり医療最先端と言われる「アメリカ」は、最も看護留学として人気な国であることは現在も昔も変わらないようです。しかし自分の進むべき道を、きちんと見極めていかなければ、アメリカで看護師の資格を取得できないのも事実です。アメリカには「看護師養成コース」がたくさんありますが、看護留学する際には、准看護師の学校でも短大でも、高い英語力を求められます。IELTS6.5(Speaking部門7.0)です。命を預かる職業なので、英語でのコミュニーションに支障がないことが必要です。
また医療英語を学ぶコースもありますが、授業料は高額です。たとえ資格を取っても、労働ビザを取得する際に求められる英語力でハードルを越えられないために、帰国する人も少なくないのです。さらにアメリカは、人種が多様なので、バイリンガルやトライリンガルの看護師は多く、さまざまな国の出身の看護師たちが全米で働いています。アメリカで看護師になることが、国際看護師であると言われるのはその意味もあるのかもしれないと思います。海外生活するということ、海外で看護師になることは、努力以外のなにものでもありません。そして、学歴と経験を積み、キャリアアップを重ね、着実に形にしていくことで、目標に一歩ずつ近づき目標達成をすることができます。
キャリアップを重ねる看護師たち
アメリカの看護師たちが看護学士(BSN)を目指すのは、安定した年収で、社会地位が確立できるという環境もあります。また看護師として、発言と指導のできる「裁量権」が与えられるのも大きな要因でしょう。だからこそ、アメリカの看護師は、キャリアアップをするのです。
それはとても「狭き門」です。単純に努力した分だけ、形になって現れるというものではありません。非常に厳しい現状です。けれど、もしあなたがアメリカでの看護師として働きたいなら、上記のような資格取得を目指してはいかがでしょうか?
「日本で正看護師資格を持っている」
「正看護師資格を持っているが、看護師職を離れている」
「アメリカで看護師になるために今すぐ渡米はできないが、いずれはアメリカの看護師試験に挑戦してみたい」
「これからキャリアチェンジして、アメリカで看護師になってみたい」
「正看護師までは自信がないが、アメリカで准看護師を目指してみたい」
そんな夢や目標を持っている方に、勇気をもって一歩踏み出すお手伝いができればと思います。